数多くある医療ドラマのなかでももっとも成功した作品のひとつ、ER。ER以降の作品はどこかで影響を受けているといってもいいぐらいでしょう。日本でも「救命病棟24時」などは日本版ERといってもいいですね。
製作陣がまず豪華。ジュラシックパークなどの原作で知られる小説家マイケル・クライトンの「5人のカルテ」が原作。クライトン自身医学生だったためそのころの体験をリアルに描いていました。それを映画監督スティーブン・スピルバーグがプロデュースしたのがERです。
スピードとリアリティ
ERの特徴はそのスピード感とリアルな治療シーン。複数の治療室の様子を長まわしで撮影することも多く、臨場感にあふれています。となりの部屋と行き来したり、と一瞬でもタイミングが合わなければNGになるようなシーンがある上に、むずかしい医療用語が飛び交い、演じる俳優の緊張感が伝わってくるようです。
パイロット版と第1シーズン
アメリカでテレビドラマを製作するときはまずテスト版を製作します。視聴率や評判がよかったら連続ドラマにするし、だめだったらすぐにお蔵入りとなります。日本でも2時間ドラマでヒットしたシリーズが連ドラになったりしますがこれが通常です。
スピルバーグとクライトンというコンビで制作されたERでさえもやはり同じ。スピルバーグはテレビ界に初進出だったため、テレビ局も懐疑的だったそうです。
パイロット版は5人のカルテをベースとしたものですがこの出来が秀逸でした。緊迫のシーンの合間にユーモアもありつつ、衝撃的な展開もあり、続きを見たいとおもわせるのに十分すぎるものでした。
出演者の出世
テレビ界と映画界というのはあまり交流がなかったわけですが、ERが大ヒットしたことを受け、スピルバーグが製作していたこともあってか、出演者にも注目が集まり映画界へ進出するようになります。特に大出世を果たしたのはジョージ・クルーニーでしょう。フロム・ダスク・ティル・ドーン以降次々と映画に出演し今や映画界でも1、2を争うスターにまで上り詰めました。
ほかにもクルーニーほどではないですがみな映画や別のドラマの主役にと活躍しています。
出演者だけでなく演出家もビッグになっていきました。第1シーズンで見事な演出をしたミミ・レダーはスピルバーグに認められ、クルーニー主演で映画ピースメーカーの監督に抜擢されます。アルマゲドンのヒットに隠れてしまって目立たなかったディープ・インパクトもいい映画でした。
出演者の降板
15シーズンも続いたERは出演者が次々に代わっていきました。クルーニーが最初に抜け、11シーズンで最後の初期メンバーノア・ワイリーが抜けていきました。やはり初期メンバーが抜けるたびに視聴率は低下してしまいます。
ただグレイズ・アナトミーと違うのは降板の際にあまりもめていないように見えるところでしょうか。スーザン役のシェリー・ストリングフィールドは一度降板したあと戻ってきましたし、シリーズの最終回近くにはかつての出演者がクルーニーを含めてゲスト出演しています。グレアナではこうはならないでしょう。
生放送
リアリティでテレビ界に衝撃をもたらしたERはその後も果敢に実験的な試みをしていきました。第4シーズンでの生放送は特に大きな話題になりました。
セリフが多く、複雑な治療シーンも多いERで生放送です。東海岸と西海岸とで時差があるため2度にわたって放送されました。メイキングを見ると1回目のときは治療するのに手袋しないでやってしまったりとミスも多かったようで、2回目のほうが完成度は高かったようです。