真実と悪夢
2本のドキュメンタリー映画「不都合な真実」と「ダーウィンの悪夢」を見た。不都合な真実は元アメリカ副大統領アル・ゴアが環境問題について演説してまわる様子を描いたもの。ダーウィンの悪夢はアフリカ、タンザニアの現状を伝えるもの。
どちらも各映画賞で注目されたけど、ドキュメンタリー映画はどう評価したらいいのかわからない。「いい」とか「悪い」とかはどう判断するんだろう。編集がうまいとか、着目した点がいいとかはいえるけど、描かれる内容についてはなんといっていいのかわからない。「いい映画」かどうかは言えないけれど、「見るべき映画」であるとは断言できる。
不都合な真実は環境問題が世間が感じているよりよっぽど深刻で急務だと訴える。ブッシュとの大統領選では不可解な結果で落選してしまったけど、もしアル・ゴアが大統領になっていたら環境問題は進展していたのだろうかとついついおもってしまう。環境対策にもっとも遅れていて、もっともインパクトを与えられるのがアメリカだから、「もし」があれば見てみたかった。
ふと思うのは、よく「地球を守ろう」とかいうメッセージを見るけど、人間は地球上の一生物にすぎないわけで、人間ごときが地球をどうこうしようというのがおこがましいのではないかということ。温暖化が進んでいるのは事実だけれど別に地球が壊れていっているわけではなく、変化に対応しようとしているだけなのではないか。たまたまそれが人間にとって住みにくい環境になるから人間は焦るのであって、マンハッタンが海に沈もうがどうしようが地球にとってはなんでもない。
地球のために環境問題に取り組もうというのではなく、自分たちが生きるためにやらなきゃいけないという問題なのではないか。人間のすべての行動はけっきょくは生存しようとしているだけであって、それがレジャーでも娯楽でもすべては生きるために行っている。で、その活動が結果的に自分たちの首を絞めてるので見直しましょう、ということなんじゃないかな。
「地球を救おう」とかいうごたいそうなメッセージじゃなく、「生き残るために必要なんだ」と訴えたほうがみんな真剣に環境問題に取り組むのではないかとおもう。アル・ゴアが息子の世代のために活動してる、というのはそういうことなのだろうな、とおもった。
ダーウィンのほうはもっと重い。アフリカのビクトリア湖に肉食の魚ナイルパーチが放流された。またたくまにナイルパーチは繁殖し、この魚によってビジネスは拡大し国は救われた。しかしナイルパーチは湖の生態系を破壊した。猟師たちの多くはエイズで苦しみ、女性は猟師相手に体を売って生活し、ナイルパーチは輸出用で高いため国民は食べられず、貧困と飢えはまったく改善されない。魚の輸送用の飛行機は来るときは武器を運んでいるらしく、みなそれを知っているのに語ろうとはしない。多くの人が勉強したいと言う反面、「みんな戦争を望んでいるんだ」という言葉も衝撃的だった。
ビジネスとしてはおいしいナイルパーチも、現地の人にとってはいいことだったのかどうか。なければ仕事がなく死んでいくんだろうし、このビジネスがあるために新たな危険や問題が生じ、やはり命が奪われていく。どうしようもないほど絶望的で、世の中の不公平というか不条理を恨みたくなる。でもこうしたらいいという解決策がまったく思い浮かばない。すべてが鎖のようにつながり、どうにもならないスパイラルに迷い込んでいる。
ただこの真実を伝えたことはとても大きい。何にもしらずに毎日200万人がナイルパーチを食べているわけだから。これからナイルパーチを食べるたびに思い出すだろうな。でも不買運動みたいなことをすれば彼らの仕事はなくなるし、かといって気持ちよく食べられるとも思えない。うーん。